【朝】
緩やかに覚醒する
耳に流れ込んでくる、朝の音
鳥の鳴き声、お湯の沸く音、卵を割る音
目を開け、リビングに続く扉を見やる
半開きになった扉の奥
後ろ姿の君を見つける
一瞬、まだ夢の中なのかと思う
しかし、振り向いた君が
半身を起こした此方に気付いて
柔らかな笑顔で朝の挨拶を口にする
此方も寝起きの締まりのない顔と、掠れた声で挨拶を返した
君は苦笑しながら此方に近づく
少し寝癖のついた髪を撫でながら
早く起きろと促す
ぼんやりと思考の鈍った頭で、母親の様だと思ったら
どうやら声に出したらしく
君は引きつった顔になった
撫でていた手で、少々強めに叩かれる
いたいとぼそりと言うと
さっさと起きろと先程より、強く言われた
どうやら、気に障ったらしい
のそのそとベッドから降りていると
まだ、近くに居た君に呼ばれる
何だと思い顔を上げる
すると、君の顔のアップ
そして、額に柔らかな感触
ぽかんとしていると
君はニヤリと笑い、時計を指差しリビングに戻って行った
してやられたという妙な敗北感を感じたが
時計を見て、そんな考えは吹っ飛んだ
家を出る３０分前
バタバタと着替えを済ませ
洗面所に駆け込む
身なりを整えリビングに行くと
呆れ顔の君と、コーヒーの香り
いつもの、慌ただしい日常
でも、これからも続く日常
しかし、この日常が近々変わるかも知れないと思いつつ
自分のまだ平らな下腹部を撫でた
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